文字起こしでリスニング力を伸ばす方法と理解の確かめ方
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文字起こし(トランスクリプト)を使ってリスニング理解力を伸ばすには、まず文章を見ずに音声を聞き、聞き逃した箇所を文字起こしで調べ、最後にもう一度、文章なしで聞きます。書かれた一文を見れば、表現を知らなかったのか、知っている単語を認識できなかったのか、連続する音声を単語に区切れなかったのかがわかることがあります。それぞれに必要な対処は異なります。
文字起こしはリスニング理解力を高める?
文字起こしは理解やリスニング練習を助けます。ただし、単語が見えている状態で理解できても、音声だけで内容を追えるとは限りません。
上級の英語学習者31人を対象にした14週間の授業研究では、文字起こしを使う場合と使わない場合の反復リスニングを比較しました。文章なしで聞き、後の回で文字起こしを追い、再び文章なしで聞いた学習者は、音声だけで練習した比較対象のグループよりも、リスニングテストの伸びが大きくなりました。ただし、少人数を対象に既存のクラスを使った研究です。この順序を試す根拠にはなりますが、あらゆる学習者や言語にとって最適な順序だと示しているわけではありません。
ここで文章なしから始める理由は実践的なものです。音声だけで何を理解できたか、記録を残す必要があるからです。目の前の目標が難しい内容を理解することなら、先に読むのも妥当な選択です。ただし、その場合は、どの単語を補助なしで認識できたかを判断する材料が少なくなります。
文字起こしで何に気づくとよい?
文字起こしは、話された内容を文章にしたものです。翻訳とは異なり、録音で使われた単語が示されます。ただし、タイミング、強勢、音の弱まり、アクセント、声の調子を完全には表せません。調べたい音声を、文章で置き換えることはできないのです。
文字起こしを使い、次のような理解の穴を区別してみましょう。
| つまずき | 文字起こしで気づくこと | 次にすること |
|---|---|---|
| 音の認識 | 文字で見れば知っている単語を、話し言葉では認識できなかった | 短いフレーズを再生し、その単語と実際の音を対応させる |
| 音声の区切り | 単語は知っていたが、音声の中で境目がわからなかった | 再生しながら単語の並びを追い、その後で文章を隠す |
| 言語知識 | 単語、表現、構文が、文字で見てもよくわからない | 文を理解するのに必要な最小限の説明を確認する |
| メッセージの組み立て | 個々の文はわかるが、文同士のつながりや目的がわからない | 聞き逃した文によって出来事、主張、態度がどう変わるかを説明する |
これらは原因を探るための仮の説明であり、文字起こしだけで確定できる診断ではありません。聞き逃した一つのフレーズに、複数の問題が関わっていることもあります。練習する内容を決める前に、最初の理解、書かれた一文、聞き直した音声を比べてください。
建物の工事についての案内を聞く、架空の学習者を考えてみましょう。次の英語の文と学習者のメモは、説明のために作った例であり、音声付きの練習問題ではありません。
They called off the inspection, but the repairs will still start on Monday.
学習者が最初に「検査について何か言っている。工事は月曜日に始まる」とメモしたとします。抜けている部分は重要です。検査は中止された一方、修繕は予定どおり行われます。文字起こしを読むと、この対比がわかります。ただし、次の対処は、なぜ called off the inspection(検査を中止した)を聞き取れなかったかによって変わります。
文字で見ても called off を知らないなら、その意味を知る必要があります。この文では canceled(中止した)という意味です。補助なしで繰り返し聞くだけで、知らない意味がわかるとは限りません。意味を確認したら文全体を聞き、何が変わり、何が変わらないのかを捉え直してください。
inspection(検査)は文字ならすぐにわかるのに、録音では認識できなかった場合、定義をもう一つ調べても、その穴は埋まりません。実際の録音でフレーズを再生し、その単語が話される箇所を探します。実際の音と、予想していた発音を比べてください。予想に自信がないなら、信頼できる辞書の音声で確認することもできます。ただし、単語だけを練習して終わらず、元の話者が話すフレーズに戻りましょう。
一つひとつならすべての単語を知っていて認識もできるのに、どこで一語が終わり、次が始まるかわからなかった場合は、その並びに取り組みます。再生しながら called off the inspection を追い、次に文章を隠して、文の中からその単語を聞き取ってください。この英語の例で文字に空白があるからといって、そのたびに聞こえる間があるとは考えないようにします。この例文だけでは、どの音が問題だったのかはわかりません。それには録音が必要です。
役立つのは、聞き逃した内容に結び付いた説明です。「中止を表す表現を知らなかった」「単語は知っていたが、あの箇所では認識できなかった」といったことがわかれば、全体をやみくもに再生するのではなく、対処を選べます。
音声と文章をどう行き来すればよい?
主な話題を追える短い一節を選び、録音とよく一致する文字起こしを用意します。ポッドキャスト、会話、オーディオブック、音声付きの記事、正確な字幕のある動画は、いずれも教材の候補になります。聞き逃した箇所を探すだけで練習時間を費やさないよう、短く区切ってください。
- 文章を隠し、伝えたい内容を聞き取る。 主な出来事、依頼、主張を説明します。もっともらしい推測で穴を埋めず、不確かな点を記録してください。
- 理解に影響する穴を見つける。 必要なら再生し直し、重要な細部がどこで不明瞭になるかを記録します。録音全体を書き取る必要はありません。
- 対応する行を確認する。 自分の説明と比べます。表を使って問題を探り、必要な意味や音を確認してください。文字で見ても内容がわからないなら、普段のリスニング練習にはもっと易しい教材を選びます。
- 文章と音を対応させる。 学習中の言語の文字起こしを追いながら聞き、対処したフレーズに注意を向けます。文章を先へ読み進めず、話者のペースに合わせて目を動かしてください。
- 文字起こしを隠して、もう一度聞く。 先ほど聞き逃した細部も含め、内容を説明します。書かれた形を覚えているだけでなく、音声の中でそのフレーズを認識できるかを確かめてください。
Comprehensyには単語ごとのハイライト付き音声があり、対応する文章の中でフレーズの位置を探す助けになります。この対応を使って理解の穴を調べたら、最後に聞くときは文章を隠してください。
建物の案内について説明を直すなら、検査は中止されたことと、修繕は予定どおり月曜日に始まることの両方を残します。音声が簡単に感じられると言うだけでは、最初の誤解が解けたかは確認できません。補助があっても主な内容を捉え直せないなら、その録音をいつまでも磨き込まず、もっと取り組みやすいものに替えましょう。理解可能なインプットの解説は、内容を追うのに十分な手がかりが教材にあるかを判断する助けになります。
文字起こしは学習中の言語で書かれているべき?
音と単語を結び付けることが目的なら、学習中の言語による文字起こしを使います。翻訳を見れば意味はわかりますが、学習中の言語のどの単語が、特定の一連の音を生み出したかまではわかりません。
なじみのないスコットランド英語とオーストラリア英語のアクセントに触れるオランダ語話者を対象にした実験では、英語字幕を見た参加者は、後で、聞いたアクセントによる新しい音声断片を復唱する成績が向上しました。オランダ語字幕を見た参加者は、字幕なしの場合より、新しい断片での成績が低くなりました。特定のアクセントと音声の復唱課題を扱った実験であり、翻訳のあらゆる使い方を検証したものではありません。音声に対応する単語を確認できるようにする根拠にはなりますが、翻訳はいつでも学習を妨げるという規則にはなりません。
学習中の言語の一文を見ても内容がわからないなら、未解決の意味を翻訳で確認します。次に学習中の言語の単語に戻り、録音と対応させたら、両方の文章を隠してもう一度聞いてください。翻訳は「これはどういう意味か」に答えます。音声に対応する文字起こしは「どの単語が聞こえているのか」に答える助けになります。
見た目の整い方より、正確さのほうが重要です。名前、数字、どうしても音声と一致しないように思える行を抜き出して確認してください。文字起こしが言い換えや省略をしている場合、内容は伝わっても、実際に聞こえた音を説明できないことがあります。この練習には、音声により忠実な文字起こしを選びましょう。
リスニング力が伸びているか、どう確かめる?
対処したフレーズを文章なしで認識できれば、その録音については役立つ成果が得られています。ただし、別の声でも認識できることや、初めて聞く話を全般に追えることを示したわけではありません。今は話者が何を言うかを知っており、そのなじみが理解を助けています。
結果に応じて補助を調整します。内容は追えるものの、一つの細部を聞き逃すなら、関係する行だけを表示しましょう。必要な細部を含め、すでに正確に説明できるなら、ずっと読み続けるのではなく、不確かな箇所を確認するために文字起こしを使います。文章なしではほとんど何もわからない場合、いきなり補助をすべて取り去るより、短い、または易しい教材から始めるほうが取り組みやすくなります。
初めて聞く状態で確かめるため、まだ聞いていない録音も残しておきます。同じ話者または同じシリーズから同程度の難しさの新しい音声を選び、以前の初回と近い条件で、文章なしで聞いてください。文字起こしを確認する前に、主な内容と重要な細部を記録します。楽に感じるか、速く理解できるかだけでなく、正確さと必要だった補助を比べましょう。
なじみのある録音を滑らかに聞けることより、新しい録音で結果が良くなることのほうが、進歩を示す強い証拠になります。ただし、話題や難しさの違いも結果に影響します。聞き慣れた音声は明瞭になるのに、新しいものはわからないままなら、成果のあったフレーズ練習は続けながら、教材と、対処しようとしている理解の穴を見直してください。何に耳を向ければよいかがわかり、文章なしでも聞こえ始めたとき、文字起こしは役目を果たしています。